エミー・ロッサム『インサイド・アウト』全曲分析 関連がありそうなCDをあげていきますが、パクリネタとを追求する目的ではありません。(2008年5月6日) 「エニイモア」にダミアン・ラシスを入れて、ドリー・パートンを「グレート・ディヴァイン」に(2008年7月12日) | まずはこの2枚 |
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No Angel (1999) Dido |
Details (2002) Frou Frou |
エミー・ロッサムのデビュー・アルバム『インサイド・アウト』に一番影響を与えたアルバムはダイドの『ノー・エンジェル』とフル・フルの『ディテイルズ』ということになりそうだ。エミー本人がアンビエント・ポップと形容したサウンドは、『ノー・エンジェル』の乳白色のような湿ったボーカルと音像、フル・フルの打ち込みアレンジに影響されたと思われる音が随所に聞かれる。フル・フルはイモージェン・ヒープ、ガイ・シグスワースともに活躍しているだけにぜひ日本盤も再発してほしい。 | |
01.「スロー・ミー・ダウン」 | |
Medulla(2004) Bjork |
A Cappella(1985) Todd Rundgren |
エミーの声オンリーで構成された印象的な1曲。多重コーラスということで、エンヤやイモージェン・ヒープとの比較されがちだが、彼女たちはキーボード奏者的発想の方が強いので違うと前に指摘した。日本で一人多重録音と言えば山下達郎の専売特許だが、ポピュラー音楽ではビョークの『メダラ』が有名。時代をさかのぼるとトッド・ラングレンの『ア・カペラ』というずばりな題名のアルバムもある。ア・カペラは実験的な要素とコーラス/ドゥー・ワップの要素がある。ビョークは前者寄り、トッド・ラングレンは後者寄り。20年近く差がある二枚なので同じことをしようとしてもテクノロジーの変化はかなりあるはずだ。 | |
02.「インサイド・アウト」 | |
To Faithful Departed(1996) The Cranberries 参考曲「When You're Gone」「Electric Blue」 |
Finally Woken(2004) JEM 参考曲「24」 |
これまたボーカルから入る2曲目はぐっとテンポを落として歌われる。この曲の中盤の"ダラッダラー"コーラスで連想されるのは『トゥ・ザ・フェイスフル・ディパーテッド』の頃のザ・クランベリーズ。ボーカル、ドロレス・オリオーダンの特徴と言えば(何と呼んだからいいかは知らないが)途中で声をひっくり返す歌唱法だ。これはJEMの「24」でも聞かれる(もちろんギターがかなりなっているバックのサウンドに共通点はあまりない)。シネイド・オコナーも一時期これを多用していたが、これがアイルランド特有なものなのかは不明。 | |
03.「ステイ」 | |
No Angel (1999) Dido 参考曲「Here With Me」 |
Tails(1995) Lisa Loeb & Nine Stories 参考曲「Stay」 |
幻想的な曲調にしっかりとタイトルが歌われる曲。この曲名を聞いて思い出したのはリサ・ローブだが、曲は別に似ていない。このわざと声を湿らせたような感じはダイドの「ヒア・ウィズ・ミー」が近い。声にあわせたかのように音全体に靄がかかったようなサウンドも同様。 | |
04.「フォーリング」 | |
Details (2002) Frou Frou 参考曲「Let Go」 |
Speak for Yourself(2005) Imogen Heap 参考曲「Loose Ends」「The Walk」 |
アルバムの中でもとくにポップな曲。これははフル・フルの「レット・ゴー」が下敷きだろう。イモージェン・ヒープの『ひとりごと Speak For Yourself』からの「ルーズ・エンズ」、「ザ・ウォーク」からの影響もありそうだ。 リズム・アレンジはJEMの「ゼイ」のほうが近い。これらと比べるとこの曲のアレンジはややダサいが、その分だけ親しみやすさも感じる。 | |
05.「グレート・ディヴァイン」 | |
Backwoods Barbie(2008) Dolly Parton 参考曲「Only Dreamin'」 |
Robbie Robertson(1987) Robbie Robertson 参考曲「Fallen Angel」 |
その他の参考曲「Across the Great Divide」The Band(1969)/The Band|◆「Red Rain」So(1986)/Peter Gabriel◆「Possession」Fumbling Towards Ecstasy(1993)/Sarah McLachlan◆「Where Will I Be」「Wrecking Ball」/Wrecking Ball(1995)/Emmylou Harris◆「Fix You」X&Y(2005)/Coldplay | |
アルバム前半のハイライト。歌い方はドリー・パートンから教わったと言う。ドリー・パートンはキャリアがとてつもなく長いのでベスト盤と最新作しか知らないので、影響云々を指摘することはできない。その最新作『バックウッズ・バービー』は久々のカントリー・アルバムということになるとのこと。彼女は外見が派手なだけに誤解されやすいが、ソングライターとしても優れている。アルバムの情報がまだ少ない頃にこの「グレート・ディヴァイン」という言葉を知ったときはまだこれが曲名なのか、なんらかの影響を彼女に与えた本や映画なのか、それすら分からなかった。そんなときに頭に浮かんだのはサラ・マクラクランの「ポゼッション」とザ・バンドの「ロッキー越えて」の原題"Across the Great Divide"だった。やがてこれが曲名で映画「歌追い人」にインスパイアされた曲だと知り、いわゆるアメリカン・ルーツ音楽に近いものになるのではないかと予想していたがまるで違う静かな曲となっていた。それはザ・バンドの音とギタリスト、ロビー・ロバートソンのソロ・アルバムの音との落差にも似ている。そのアルバムを手掛けたのはダニエル・ラノワで、彼はU2の『ヨシュア・トゥリー』やピーター・ガブリエルの『So』の(共同)プロデューサーとして知られる。そしてこれ以降90年代にかけてはルーツ音楽の傑作をいくつも手掛けていった。その中の一枚に映画『歌追い人』のサウンドトラックにも参加したエミルー・ハリスの『レッキング・ボール』もある。もしサントラでエミーとデュエットしたのがドリー・パートンでなくエミルー・ハリスだったら、この曲を別のアレンジがされただろう(ちなみにここであげたアルバムの多くにはピーター・ガブリエルの「レッド・レイン」的な楽曲が収録されている)。またイントロからしばらくはコールドプレイの「フィックス・ユー」に似ているようだが、これは静かに始まって段々に盛り上がるタイプの曲なのでやや違う。 | |
06.「ララバイ」 | |
The Ultimate Collection(1997) Clannad 参考曲「Na Buachailli Alainn」 |
Fuaim(1982) Clannad 参考曲「Na Buachailli Alainn」 (オリジナル盤及びビクター盤他はもっと普通の集合写真) |
ハァー・コーラスから始まり、それが中盤にも使われるタイトル通りに穏やかな曲調と歌声が母性を感じさせる1曲。面白いのはリエゾンをして"んにゃ"と聞こえるところ。これはアイルランドのシンガーを思い出したが、具体的に誰の歌だったか思い出せない。今回色々と聞いてみてクラナドをあげておく。ボーカルはエンヤの姉こと、モイヤ・ブレナン。エンヤが在籍し、彼女のプロデューサーでもあるニッキー・ライアンがプロデュースした『ファム』からの曲「美しい若者」(ビクター盤邦題は「素敵な彼ら」)。残念ながらアルバムは持っていないのでベスト盤『妖精のレジェンド~ベスト・オブ・グラナド』から。蛇足ながらこの頃のクラナドはベースが実にかっこいい。 | |
07.「ドント・ストップ・ナウ」 | |
Universal Mother(1994) Sine'ad O'Connor 参考曲「Thank You for Hearing Me」 |
Takk...(2005) Sigur Ros 参考曲「Se lest」 |
その他の参考曲「Slide」No Angel(1999)Dido | |
バックの静けさと情熱を秘めたボーカルがうまくマッチングした曲で、エミーの表現力がよく出ている。バックで鳴っているリズムマシンで連想するのはフィル・コリンズだが、それだと古過ぎるのでシネイド・オコナー「サンキュー・フォー・ヒアリング・ミー」(『ユニヴァーサル・マザー』)とまたまたダイドのファーストから「スライド」をあげておく。隠し味としてシガー・ロスの「シエ・レスト」(『Takk…』)あたりも入っているだろうか。 | |
08.「ハイ」 | |
Full Moon(2004) Brandy 参考曲「Come a Little Closer」 |
Takk...(2005) Sigur Ros 参考曲Hoppipolla"」 |
その他の参考曲「Ode to My Family」No Need to Argue(1994)/The Cranberries◆「Last Boat to America」A New Day at Midnight(2002)/David Gray | |
またしてもボーカルから始まるこの曲は、実は最後まで参考となる曲がなかなか思い浮かばなかった。声の感じはダイドに近いのだが、彼女にはあまり明るい曲調がないので違う。クランベリーズの「オードゥ・トゥ・マイ・ファミリー」(『ノー・ニード・トゥ・アーギュ』)やデヴィッド・グレイの「ラスト・ボート・トゥ・アメリカ」(『ア・ニュー・デイ・アット・ミッドナイト』)は似ているがやはり曲調が違う。色々と探した結果、スチュアート・ブローリーがブランディーに提供した「カム・ア・リトル・クローサー」(『フル・ムーン』)が一番近かった。しかしこの曲のポイントはなんと言ってもその高揚感だ。これはシガー・ロスの「ホッピポッラ」(『Takk…』)のそれにも似た独特のものがある。 | |
09.「ア・ミリオン・ピーシズ」 | |
Finally Woken(2004) Jem 参考曲「Stay Now」 |
Never for Ever(1980) Kate Bush 参考曲「Delius (Song of Summer)」 |
その他の参考曲「It's Good to Be in Love」Details(2002)/Frou Frou | |
ストリングスも印象的なこの静かで美しい曲が個人的にはアルバムで一番の出来だと思う。声の使い分けもお見事。アレンジとリズムはJEMの「ステイ・ナウ」(『ファイナリー・ウォークン』)に、後半の盛り上がりはフル・フルの「イッツ・グッド・トゥ・ビー・イン・ラヴ」。さらにはこの名前を出すのは安易だと言われそうだがケイト・ブッシュの「ディーリアス(夏の歌)」(『魔物語』)も似たような雰囲気があるということであげておこう。 | |
10.「雨の日と月曜日は」 | |
Carpenters(1971) Carpenters Rainy Days and Mondays |
Here Comes Inspiration(1974) Paul Williams Rainy Days and Mondays |
ポール・ウィリアムスとロジャー・ニコルズのペンによるカーペンターズのこの曲は、ほとんどのベスト盤に入っている彼らの代表曲の一つ。アルバムとしてはセルフ・タイトルの3枚目に収録。カーペンターズはオリジナル・アルバムよりはベスト盤でという人も少なくないだろうが、アルバム単位で聞くと改めてリチャード・カーペンターの存在を強く感じるという、極当たり前の感想を持つ。有名曲なだけにカバーも多いが作者のポール・ウィリアムスも自身のアルバム『友に捧げる詩』で歌っているのでカーペンターズの歌と比較してみよう。カレンの歌は全体的には憂鬱をかもし出しながらも、リチャードの声と合わせて仄かな明るさも感じさせるのに対して、ポール・ウィリアムスはいかにも憂鬱そうだ。歌詞からすると後者の方が正しいのかもしれないが、それだけでないニュアンスを出すところがカレンのボーカリストして凄いところだ。エミーのアレンジは「スロー・ミー・ダウン」風のアレンジが窓を締め切った雨の日を連想させる歌詞に忠実な印象だ。 | |
11.「エニイモア」 | |
Songcatcher(2001) Music from and Inspired by the Motion Picture 参考曲「Pretty Saro」Iris DeMent |
o(2002) Damien Rice 参考曲「volcano」 |
この曲は「グレート・ディヴァイン」と同じくドリー・パートンの歌に影響を受けたと言う曲だが、歌詞が会えない父親のことを歌っているだけあり、実にエモーショナルなボーカルとなっている。『歌追い人』のサウンドトラックだとアイリス・ディメント 「プリティ・サロ」が一番近い。またチェロを有効的に使ったアレンジはダミアン・ライスを思い出す。「ヴォルケーノ」などを参考にしたのではないだろうか。 |
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